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14. 堀江さんの河馬


「カバ、好きだったかも」と記憶を塗り替える前の私には、
カバといえば、堀江敏幸さんでした。

作品集『おぱらばん』(1998年)を読んだ25歳の頃、作者と同時代に生まれた幸せを思い、
この人の本はぜんぶ読むんだと心に決めて、以来、25歳の誓いをクリアしています。

堀江さんがカバにひとかたならぬ愛を寄せているのは、読者ならよく知ること。
 
「留守番電話の詩人」(『おぱらばん』所収)と「裏声で歌え、河馬よ」(『回送電車』)は
ズバリかばをめぐる話ですし、「キリンの首に櫛を当てる」(『バン・マリーへの手紙』)は
キリンが主役ながら、外国でも動物園に行くようになって、という流れで以下に続きます。
 
(…)どこへいっても、私の目は、子ども時代とおなじように、河馬とキリンを探していたのである。
 河馬については、(…)少々学術的な一文を草したことがあるし、その河馬にちなんだ古い絵はがきを蒐集していたこともある。
 

堀江さんはいつでもつねに「河馬」と神々しく漢字を用います〔*註〕
麒麟とは記されないキリンを憐憫(れんびん)の目で見るのは、
カバ目線の優越感、あるいはカバへのひいき目というものでしょうか。


ただ、いくら堀江さんが愛するからといって、
かつての私がカバまで好きになることはありませんでした。

ああ、浅はかだった若い自分に教えてやりたい。 
堀江さんを読むときの脳波をとれば、カバ時間と同じ波長が現れるということを。
 
カバ時間、お忘れですか? それは鏡面のような心が訪れる奇跡の時。(5.

個人差はあるでしょうが、私の場合、〈堀江敏幸時間〉=〈カバ時間〉なのです。
この頃になってやっとそれに気づきました。

でも私が潜在的カバ派であったことは、あながち嘘とも言えません。
だって、堀江さんがキリンも好きだったなんて、まるで覚えてなかったし……。
 
 
  
「かばの本」に、堀江敏幸さんの寄稿が実現しました!
私の感涙の程を想像してほしいものです。

ヒポミさんとはまたちがった河馬への深い思いを秘蔵の絵はがきとともに味わうとき、
あなたにも〈河馬時間〉が訪れるかもしれませんよ〜。お楽しみに!
 
 
ところで、中ほどの引用文中の下線部、
《古い絵はがき》のことは「留守番電話の詩人」に書かれています。
じゃあ《少々学術的な一文》とは?
 
じつはこの《一文》のおかげで、辺見じゅんは「河馬の叡智」を歌うことになりました(3.)。
秘密を明かすのは、まずはこれくらいにしておきましょう。


*〔表記について〕 日本語には「かば」「カバ」「河馬」と三通りの選択肢があります。ヒポミさんが最もしっくりくるのは「かば」だといいます。ただし平仮名が並ぶと目立ちにくいという難点があり。よって本でも前後の文脈によって平仮名と片仮名を使い分けることにしました。もっとも、本の中の堀江さんの文章は、もちろん「河馬」一色です!


カードスタンド2.jpg
カードスタンド1.jpg




カバのカードスタンド 

神保町すずらん通りの文房堂には、たまにカバがいる。
毎度「カバはいませんか」と訊ねるA子のために、
もっと仕入れてくれないかな。
「本は装いです」のしおりは、
三省堂本店のレジ横にあった、紙の専門社〈竹尾〉製。
いえいえ、中味も大事です。

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